SATIAN/39番外編 - 主にしょうもない話し -

日常であったしょうもない出来事やたまに宣伝

クレイジージャーニー、キルギス編の間違い・演出・疑問・有識者の意見など

 

 

…当方のブログにも書いた事ではあるが、ついでにこちらにも記す。

 

【演出と取るか、やらせと取るか】

先日のクレイジージャーニーを見て思った事を。この手の類の内容を書くのは非常によろしくはないと思うのだが、
旧ソ連の遺構を被写体とする身としては流石に思う事が多かったので敢えてしたためる事にする。

先日放送したキルギス旧ソ連の“秘密都市”エニリチェク。
実はこちら私も数年前に足を運んでいるのだが、秘密都市ではない。
旧ソ連の閉鎖都市リストは下記より。

ru.m.wikipedia.org

中国国境に非常に近いが故軍の管轄下にあり、入域の際は政府の許可が必要であるというセンシティブなエリアなのだ。
通常入域2週間前には書類申請が必要で、当然その時いつ行くのか、何日の滞在なのかなどは記載する。
エニリチェクはゴーストタウンなので人が住んでいる事にとても驚いたというようなシーンがあったが、あれは明らかにおかしい。
まず、2日間の滞在となるなら当然現地かその近辺の宿泊になるだろう。
人が住んでいない場所での宿泊がどうなるか、ホテルなのかキャンプなのか、こうしたやりとりは事前に発生する。
エニリチェクにはホテルがないので、必然的に一般のご家庭への滞在(民泊、ホームステイ)という形になる。
人が住んでいる事は知らなかったというような事はおかしい、知らない筈がないのだ。
(ちなみに入域する際には途中軍の管轄であるゲートを通過する)

エニリチェクを紹介しているWebサイトやWikipediaには、大抵この場所に人が住んでいるという事が記載されている。
(エニリチェク(Engilchek,Эңилчек)のWikipediaは英語のみである)

en.wikipedia.org


当然それ位は眼を通すだろう。
やはり知らなかったというのは不自然すぎる。

取材に赴いた写真家氏が番組冒頭の説明で、キルギスの事を旧ソ連“衛星国”と発言していたが、実際は構成国だ。
この違いは大きいというか、全然違う。
…自分で調べていないのだろう、テレビという舞台装置で踊っているだけの演者のように見える。
やらせとまではいかなくても、演出にしても、お粗末な気がする。
ドキュメンタリー調でいきたいのであれば、せめてもっときちんと調べて欲しい。偽りを報道しないで欲しい。

 

そしてキルギス編・後編で『頓挫系テーマパーク』と写真家氏が説明していたが、実際は違う。アーラム・オルドという。

2009年に建設されたアーラム・オルドは、文化、科学、スピリチュアリティの文化複合施設になる筈だった。
キルギスの若者たちが年長者と意見を交換し、講義やカリキュラム、レッスンなしで学びを得る場所となる筈だった。
コミュニティには365棟のユルトに住み、そのうち36棟は年長者用に指定された。
これによって新しい世代を育成し、そのアイデアが遠く離れた国々にも届き、キルギスノーベル賞をもたらす…
という壮大なビジョンがあった。
しかし、そのプロジェクトは叶わぬ夢となった。
2010年、当時の大統領クルマンベク・バキエフ氏は2010年キルギス騒乱で権力の座を追われる事となった。
そしてアーラム・オルドは放棄され、現在に至るのだ。

 


同行していたガイドがテレビ業界の知人の知人なのだが(普通に他人じゃないかというツッコミはさておき…
尚ガイドは人違いなのではというツッコミは、写真家氏がガイドの名前を略称で呼んでいるシーンがあるのでそれはない)

「ベテランの彼が付いていてそれなりに説明をしている筈です。
ガイドの説明には全く聞く耳持たずなのだろうと推測します。
そもそも、テレビ番組、バラエティ番組がガバガバなのは今に始まったことではありませんし、本人たちが反省することもないでしょう。
出演者本人からのクレームならまだしも、外野の人間のそういう声には聞く耳持たないでしょうし、
コンプライアンス的に問題になることはないでしょう」

実際に自分が訪れたり追いかけている場所がこうしてテレビで想いのない人間たちによって紹介されると、
映えとネタを重視した扱いに嘆き悲しむ友人知人を見てきたが、こういう気持ちになるのだな…と、気持ちを理解してしまった…
情報が正しいかどうかなんて関係ない。それを見ている層には重要じゃない。それを届ける側にすら重要じゃない。
バラエティとは言えドキュメンタリー仕立てにしているのに、なんだかな…

 

尚、マイリ・スウの博物館は、ロシアではなくEU支援で作られてる。

www.eeas.europa.eu


写真家氏、テキトーな事を言わないでくれ…帰国して数ヶ月経っているのだから、調べる時間もあっただろうに。
巨大像もGoogleマップに載っているので何の像か調べもつくのに。
(ちなみにウラン鉱脈はキルギス全土に点在している。秘密都市もひとつではない)

いいテレビ番組とは、真実か否かは関係ない。

 

テレビでテキトーな事を言ってもファクトチェックもせず、垂れ流した侭だったりやらせ紛いの演出があっても
素知らぬ顔をしている人間より、(知見があった上で)リアルタイムでとんでもない場所へ行き面白い事を呟いてる
限界旅行者たちの方がよっぽどいい意味でクレイジーで、本物だ。
だから私個人は、ファクトチェックもロクにせず過剰演出をし続けるメディアや、見栄えが良く煌びやかな売名やバズに走る人間よりも、
きちんとした情報と事実を誠実に伝え続ける人間の方を信じている。



本気で旧ソ連の遺構、廃墟、モニュメント、遺産、建築などの被写体を追いかけている身としては、
ソ連の遺構をただのエンタメとして消耗している様子を見るのは哀しいものがある。
写真家氏(以前cakesで書かれていた有料記事がとても良かった記憶がある)も番組も嫌いという訳ではない、
リスペクト出来た部分も過去に沢山あっただけに、ただ哀しいだけである。