SATIAN/39番外編 - 主にしょうもない話し -

日常であったしょうもない出来事やたまに宣伝

知人に騙されて愛人斡旋会に連れて行かれた時のお話

ぼーっとする。

集中力になんだか欠けて原稿も思うようにまとまらない。

そんな時は、雑多な思い出話でもしてみようと思う。

 

 

ある時、知人から唐突にメールがあった。

『今日空いてる?』

『空いてるけどどうしたんですか』

『偉いお医者さんと女の子たちでご飯食べる予定だったんだけど、女の子が一人ドタキャンになったんだ。よかったら来ない?』

『いいですよ。今日、格好すっごいテキトーだけど大丈夫ですか』

『大丈夫だよ。詳しくは現地で話すから』

なんだかよく分からないが、食事会で欠員が出たらしく、その穴埋め要員を探しているようだった。

高〜〜い焼肉奢って貰えるよ。

美味しい餌にホイホイ釣られ、仕事後私は待ち合わせ先の某セレブタウンへと向かった。

 

 

「久しぶり!」

知人は、やり手の某誌編集長だった。

黒い噂もたくさんある男だが、楽しいネタを仕入れられるので面白がって連んでいた。

「お久しぶりです、お元気ですか。今日ってどういった会なんですか」

知人は一瞬視線を落とし、言う。

「まぁぶっちゃけると、愛人斡旋の会なんだよね!」

「え」

流石に、思考回路が凍りついた。

「愛人斡旋!?え、え、ど、どういう事ですか!」

「ままっ、落ち着いて」

 

 

彼曰く。

著名なお医者様が愛人を探している。

お金と引き換えに、身体の関係を結ぶアレだ。

仕事のネタをお医者様が提供してくださる代わりに、こうして時々愛人斡旋の会を開きお医者様に女性を紹介しているらしい。

お医者様の提示する条件はこうだ。

  • 身長160cm以上
  • Dカップ以上
  • 明るい性格
  • 可愛いよりは美人系
  • 会話がきちんと出来る事
  • 20歳から42歳くらいまで
  • それが揃っていればあとはOK

知人は女の子を数人揃えたが、一人どうしても外せない仕事で来れなくなってしまった。

知人は困った。

やばい、なんとかしなければ、と。

周りに条件を満たす女はいないか…と考えた時思い浮かんだのが私だったそうだ。

性格は根暗で美人ではないと思うのだがとりあえず160cm以上でDカップ以上ではある。

 

 

しかし、しかしだ。

「あ、愛人だなんて、アタイいやですよ!無理無理無理無理」

「まぁまぁいいからさ、ただで高い焼肉食べれるんだし、必ずしも愛人関係結ぶわけじゃないから大丈夫だよ。断ってもいいからとりあえずおいでよ」

正直めちゃくちゃ不安だったが、一体愛人斡旋の場がどのような場であるのかが気になりもしたので、私はその怪しげな会合に参加する事にした。

 

 

私と知人は、お医者様の待つ高級焼肉店へと向かった。

他の女性も現地集合で後から来るとの事。

内装がど金ぴかの派手な店内に緊張を覚える。

お医者様は、羽振りが良さそうな、優しい面持ちのおじさまだった。

私の様子を見てか「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」と言ってくださった。

知人に促され名刺交換をする。

その時他の女性たちがやってきた。

アナウンサー志望の派遣さんと、商社勤めのOLさんだった。二人とも美しい。コンサバ系の小綺麗な格好をしていらっしゃる。私はというと…この日はジャージにフリルのミニスカ、ボーダーのニーソックスにパイロットゴーグルを付けるというワケの分からない格好をしていた。何たる悪趣味、最悪すぎる。

 

 

私は数合わせで連れてこられたけど、二人は、愛人『志願者』なんだよな。

その微笑みから、上品な佇まいから、そんな風にはとてもじゃないけど見えなかった。彼女たちには明確な野心がある。アナウンサーになる為美しさを磨き様々なコネクションを得る、暮らしを豊かにしブランド物を身に纏いたい。

そういえば、前に仕事したモデルさんでいたな。愛人してるって人。お台場にマンション与えられてたっぷりお小遣い与えられて暮らしているって。

愛人斡旋会。

とは言うものの、内容は至って普通だった。

1:3の合コンのような。(知人はお医者様を立てる事に徹する)

レバーパテのパイ、オーガニック野菜のサラダ、厚切りの牛タン、ステーキ肉、うにが載った肉寿司、各種お肉、フォンダンショコラなど…ここぞとばかりに食べまくった。美味い、美味すぎる。お医者様はどんどん頼んでねと終始笑顔だった。

 

 

二次会はBarへ行こうとお医者様が言い、二軒目はジャズバーで会話を楽しんだ。愛人云々は置いといて、お医者様は人柄的にはとても魅力的な方だった。

終電の時間になり、楽しい会合は無事解散となる。

まぁ話はそこで終わりっちゃ終わりだ。

 

 

あっけなくて申し訳ない。

私は自分からお医者様に連絡する事はなく、お医者様からも当然連絡はなかった。

愛人になりたい女性、身体を売ってでものし上がりたい。そんな女性は、至って普通の、その辺にいそうな、会社にひとりはいそうな感じの美人さん。そう、余りにも普通だった。私にとってそれが一番衝撃的だったかもしれない。

その覚悟は、何処から来るのだろう。